陸上自衛隊

全国で約14万人の自衛官が在籍している陸上自衛隊。国土防衛はもとより、地震や豪雨などの自然災害、山林火災、航空機事故からの人命救助といった災害派遣、国際平和協力活動など、さまざまな場所、さまざまな事態への迅速な対応を可能にすべく、普段から備えを欠かすことはない。宮城県にも、東北6県の陸上自衛隊の中核となる仙台駐屯地、東北方面航空隊を展開する霞目駐屯地といった異なる役割を持つ６カ所の駐屯地などがある。陸上自衛隊と聞くと、災害派遣で被災者を救助するシーンや銃を持っての訓練など、いわゆる体育会系のイメージが強いかもしれないが、実際には体育会系の隊員は全体の半分ほど。陸上自衛隊は16の専門科に分かれており、隊員の給与の支払いや物資の調達などを行う会計科、患者の治療や部隊の健康管理などを担う衛生科といった「事務系」「経理系」「医療系」などの職種があるほか、一般的な自動車だけではなく特殊車両やヘリコプターなどを整備する職種など、幅広い分野の仕事を内包しているのが特徴。ＩＴ系や医療系、研究開発などの仕事を目指している人も活躍できる希望に満ちたフィールドが陸上自衛隊なのだ。

陸上自衛隊では、多くの人が入隊できるようさまざまなコースを用意。自衛官として定年まで働けるコースはもちろん、約２年を１任期とする「任期制自衛官」という働き方もある。「任期制自衛官」などの場合は、入隊後３カ月の基礎教育で団体生活、基礎体力、部隊として行動できる基本教練など、自衛隊員として必要な知識から学び身につけていく。その後、専門分野に応じた職種教育を受け、本人の希望や適性に合わせて各部隊へと配属される。このような教育や勤務を通じ、自動車整備士（１～３級）をはじめ、小型船舶操縦士、航空管制官、准看護師、臨床検査技師、放射線技師、電気工事士、パソコン検定（３・４級）、英語検定（２・３・４級）、情報処理（１・２級）など、多種多様な資格を取得することが可能となる。人を育てることに重きを置いている自衛隊だからこそ享受できる大きなメリットといえるだろう。技術や技能に関しても配属先の各部隊で段階を踏みながら身につけていくので、自らの成長を実感することもできる。さらに、自衛隊には、これら資格や技術・技能のすべてを、給料をもらいながら得られるという最大のメリットがある。「任期制自衛官」の場合、２年ごとに継続するか否かの意思を自ら示すので、退職する場合には、自衛隊専門の就職機関を介して新たな就職先への橋渡しも行ってくれる

入隊後、独身者などの大多数は駐屯地ごとに設けられている寮で生活を送る。霞目駐屯地を例に挙げると１部屋の人数は最大３〜4名。夕食後から消灯時間の23時までは自由時間となっており、飲酒など規律を乱す行為以外であれば好きなゲームを楽しめるなど、時代の変遷とともに快適さを増している。プールやトレーニング施設が整っている駐屯地もあるほか、理髪店、コンビニ、食堂、居酒屋なども揃っており、生活すべての用事を済ますことができるのも嬉しい。仕事終わりや週末に外出することも可能だ。注目したいのが充実の福利厚生。衣食住費と医療費は基本的に無料のうえ、優遇を受けられる生命保険や低金利の自動車ローンなども用意。さらに自衛隊員専用の貯金もあるので、
毎月、給与の半分以上を貯金している隊員も。「任期制自衛官」の中には夢のために期間を決めて入隊し、大学への進学資金や開業資金などを貯めた人もいるという。夏季や年末年始には長期の休暇をとることも可能で、メリハリのある働き方ができる。

男性はもちろん、女性が活躍しやすい環境づくりにも精力的に取り組んでいる。防衛省全体では２０２３年３月末現在で約２万人の女性自衛官が在籍。この10年間で約３％の増加を見せるなど、着々と効果を上げおり、２０３０年度までに女性隊員の割合を12％以上にする目標を掲げている。子どもが３歳になるまでは男女ともに育児休暇を取得できるほか、育児期間中には勤務時間の短縮も可能にするなど、グループで取り組む仕事が多い陸上自衛隊の特性を生かして個々人の家庭環境に合わせた働き方が選択できる。また、育休や介護などの後に復職しやすいよう、支援のためのサポートセンターを設置。近年は子育てを終えた後に復職を遂げている女性隊員も少なくなく、着実に成果を上げている。